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成猫ハグレの譲渡物語

たぶん私の思い入れが一番強かった猫だったと思う。
お世辞でもけっして「かわいい」とは言われない目つきの鋭い猫、ハグレー。7年前私がまだ東京、杉並に住んでいた頃に知り合った猫だ。

私が自分の猫を連れよく散歩に出かけた公園で知り合った。「はぐれ者」のようだからと、近所に住むSさんが「ハグレー」と名づけ、みなでそう呼ぶようになった。
とても痩せいて目だけが妙にギラギラした、人を怖がる野良猫だった。猫のことで知り合いになったSさんご夫婦とほぼ同時にえさをあげるようになったと思う。 それ以前は、生ごみをあさり生活していた。野良猫の多い地域だった。

しばらくして、ネットで知り合ったボランティアさんに協力してもらい、捕獲してもらった。私が病院まで運び避妊手術をした。
知り合って間もなくで、ずいぶん荒っぽいやり方だが仕方なかった。

その頃、ハグレには4ヶ月くらいの仔猫が3匹いた。仔猫たちはなんとか触れたので、複数の友人の家に手分けして保護してもらい、ネットで里親の募集をかけた。
いろいろあったが、保護して2ヶ月以内に、3匹ともそれぞれの里親さんたちに無事貰われていった。

ハグレは仔猫を全部とりあげられ、子供ができないように手術までされ、人間とはずいぶん勝手で嫌になる。が、仕方ない。
それ以後も公園には、ハグレとハグレの弟のモカチャンがよく連れ立ってやってきた。
その頃にはガリガリだったハグレたちは見違えるようなオデブさんになっていた。
私やSさんご夫婦から合計で1日3回ほど餌をもらっていたと思う。 それでも外にいる猫たちは運動量のせいか、家にいる猫と違いよく食べる。

ハグレはなかなか触らせてくれない子だったが、夏に知り合い、冬になる頃には、機嫌のいい時には、背中やわき腹を触らせてくれるようになっていた。
Sさんご夫婦にもなるべく触ってあげてくださいとお願いしておいた。
私はその頃、密かにハグレの里親さんを探そうと考えていたからだった。それまで成猫の譲渡は難しいだろうと諦めていた。

だが、経済的な事情のみならず、賃貸アパート住まいの私には、室内でこれ以上猫(すでに3匹)を飼ってやることができない。
Sさんご夫婦もハグレ以外に6匹の猫の世話があった。ずっとハグレを見てきた私には、責任を持って飼ってくれる人に委ねることがベストだと思っていた。

ある日、勇気を出して抱っこをしてみた。
猫なのに、やぎのような鳴き声を発し、噛まれやしないかと焦ったが、噛んだりしなかった。ずっしり重く、重い分かわいいと感じた。

私の姿を見ると背中を雨や雪にぬれながら走ってくるハグレー。
まだ猫パンチをするときもあったが、かわいくて仕方が無かった。
ポッチャリしたお腹と、ビロードのような毛並み。友人に、「ハグレはたぶんチンチラの血が入っているかも。」とまじめに言ったことがある。 「そう思っているのはあなただけよ」と言われ、そうかもしれないと思ったこともあった。知らず知らず、ハグレーは、私にとって、それほどお気に入りの猫になっていた。
半年前まで、怖くて不細工な猫と思っていたのに、今じゃこんなにかわいいと思うなんて、猫は魔物だ。
でも、たしかに、客観的に見ると、この器量だし、おまけに時々猫パンチをする怖がりな性格だから、かなりあきらめモードで、ネットに掲載した。

ところが、それから間もなくして私の願いが神様に通じたのか、ハグレーにアクセスがあった。
私はその頃、パソコンが苦手な猫ボランティアの方のために、他の猫たちも一緒に掲載募集していたので、てっきり他の猫へのアクセスだと思ったが、何度確かめてもその番号はハグレーのアクセス番号だった。
八王子に住むAさん親子だった。最初は冷やかしかと思った。
「こんな顔の子でいいんですか?」と聞くと「ワイルド系が好きなんです」という返事が明るい声で返ってきた。

Aさん親子は、ハグレをとても気長に根気よく見てくれた。
譲渡後1年してようやく獣医さんで血液検査をしてもらったという報告を受けた。
それもいまだに抱っこが怖いので、トイレに入ったときに、蓋をしてそのまま獣医さんへ連れて行ったと聞いた。
この話を聞いたときは申し訳ないが笑えた。
思い入れの強かったハグレを心から信頼できる里親さんに譲渡でき、動物の運はわからないと実感させられた最初の猫だった気がする。

ルーシーと言う名前になったハグレは今は私のことはもう覚えていないと思う。
寂しいけど、うれしい。

長生きしてね、ルーシー。  

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